東京高等裁判所 昭和29年(う)2666号 判決
被告人 粟津道雄
〔抄 録〕
論旨第一点について。
所論は被告人の所為は賭場開張図利の共同正犯ではなく、同罪の幇助に過ぎないと主張する。しかし賭場開張図利の実行々為者は一人に限られるとの経験則が存するわけがなく、本件に於て原判決引用の証拠によつて認められるように、原審相被告人山口信雄は本件賭場には時々出入りするだけで寺銭の徴収、賭客に対する戻り銭の支払等の一切を殆んど被告人粟津に任せていたこと及び寺銭を分配するに当つて山口信雄が四、被告人が三、被告人と交替で中盆をつとめ本件賭場開張罪の幇助者たる原審相被告人太田啓蔵が二の割合で分配する予定であり、賭客の中本多義男、国府田実のように山口信雄より被告人を以て賭場の責任者であると考えている者も存することをみると、被告人は山口と共謀の上、本件犯行の実行々為を為したものというべく、単に中盆として前記太田啓蔵と相匹敵する地位に過ぎないとは認められない。又被告人の原審第一回公判廷に於て公訴事実全部を認める旨陳述しているのは、山口をかばうため虚偽の陳述をしたものと認められない。従つて原審が叙上証拠に基いて被告人を賭場開張罪の本犯としたのは正当で、記録を精査しても右認定が誤であることを窺うことはできないから、論旨は理由がない。